クリエイターの転職市場:現状と展望
クリエイティブ業界の転職市場は、デジタルトランスフォーメーションの加速により大きく変化しています。特に、デジタル(Web/IT)系クリエイターの需要は高まる一方で、グラフィック(広告/SP)系クリエイターも依然として安定した需要があります。
調査によると、クリエイターの転職経路として最も多いのは「求人サイトからの直接応募」で、次いで「エージェントからの紹介」が続きます。また、「友人・知人からの紹介(リファラル)」や「前職の先輩・同僚からの誘い」も上位にランクインしており、人脈を活かした転職も有効であることがわかります。
興味深いのは、デジタル系とグラフィック系で転職経路に違いが見られる点です。デジタル系クリエイターは「企業サイトを見て直接応募」や「SNS経由での採用」が比較的多く、グラフィック系は「求人サイトからの直接応募」や「前職の先輩・同僚からの誘い」が多い傾向にあります。
職種別クリエイターの転職市場分析
デジタル系クリエイターの転職事情

Webデザイナー、UIUXデザイナー、Webディレクターなどのデジタル系クリエイターは、現在最も需要の高い職種の一つです。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、あらゆる業界でデジタル人材の採用が活発化しています。
「デジタル系クリエイターは『スキルアップできているのか分からない』『給料(年収)が上がらない』『目標となる先輩・上司がいない』という悩みを抱えているクリエイターが多い」
デジタル系クリエイターの転職における特徴として、「仕事への『興味』と併せて『価値観』に共感して転職をするケースが多い」点が挙げられます。また、リモートワークなど働き方のフレキシブルさも重視する傾向があります。
グラフィック系クリエイターの転職事情

グラフィックデザイナー、アートディレクター、パッケージデザイナーなどのグラフィック系クリエイターは、デジタルシフトの中でも依然として需要のある職種です。特に、ブランディングの重要性が高まる中、質の高いビジュアル表現ができるクリエイターの価値は変わりません。
グラフィック系クリエイターの転職の特徴として、「仕事への『興味』と併せて『能力』に関する項目が多く、スキルアップを意識した転職が多い」点が挙げられます。また、「給料(年収)が上がらない」ことに対して悩んでいるクリエイターが多いという調査結果もあります。
映像・動画クリエイターの転職事情

動画コンテンツの需要増加に伴い、映像ディレクター、動画編集者、モーショングラフィックデザイナーなどの映像クリエイターの需要も高まっています。特にSNSやWeb広告での動画活用が増える中、クオリティの高い映像制作ができる人材は重宝されています。
映像クリエイターの転職市場では、技術の進化が速いため、常に新しいツールやテクニックを学び続ける姿勢が求められます。また、自主制作作品などを含めたポートフォリオの質が採用の大きな決め手となることが特徴です。
ライター・編集者の転職事情

コンテンツマーケティングの重要性が高まる中、Webライター、編集者、SEOライターなどの文章クリエイターの需要も安定しています。特に、SEOに強いライターやコンバージョンを意識した文章が書けるライターは重宝されています。
ライター・編集者の転職市場では、特定の専門分野(金融、IT、美容など)の知識を持つ人材が優遇される傾向にあります。また、フリーランスと正社員の両方の働き方が選べる点も特徴的です。
効果的なポートフォリオの作り方

クリエイターの転職において、ポートフォリオは最も重要なアピールツールです。職種別に効果的なポートフォリオの作り方を見ていきましょう。
デザイナーのポートフォリオ作成のポイント
- 制作の背景や課題、解決策を明記する
- 自分の担当範囲を明確にする
- ビジュアルだけでなく思考プロセスも見せる
- 最新の作品を中心に、多様なスキルが伝わる構成にする
- オンラインポートフォリオサイトを作成する(Behance、Dribbbleなども活用)
映像クリエイターのポートフォリオ作成のポイント
- ショーリールを作成し、最初の30秒で印象づける
- 各作品の制作意図や役割を簡潔に説明する
- 技術的なスキルが伝わる編集やエフェクトを盛り込む
- YouTubeやVimeoなどで視聴しやすい形で公開する
- 可能であれば、商業作品と自主制作作品の両方を含める
ライター・編集者のポートフォリオ作成のポイント
- 多様なジャンルや文体の執筆サンプルを用意する
- 実績がない場合は自主制作の記事でも構わない
- SEO記事の場合は、検索順位や成果も記載する
- 編集者の場合は、企画書や編集方針なども含める
- noteやMediumなどのプラットフォームも活用する
クリエイターの年収事情と交渉のコツ

クリエイターの転職において、年収は重要な検討ポイントです。調査によると、「給料(年収)が上がらない」ことがクリエイターの主要な悩みの一つとなっています。職種別の年収相場と、転職時の年収交渉のコツを見ていきましょう。
職種別の年収相場
職種 | 未経験〜3年 | 3〜5年 | 5〜10年 | 10年以上 |
Webデザイナー | 350〜450万円 | 450〜550万円 | 550〜700万円 | 700〜900万円 |
UIUXデザイナー | 400〜500万円 | 500〜600万円 | 600〜800万円 | 800〜1000万円 |
グラフィックデザイナー | 300〜400万円 | 400〜500万円 | 500〜650万円 | 650〜800万円 |
映像ディレクター | 350〜450万円 | 450〜600万円 | 600〜800万円 | 800〜1000万円以上 |
Webライター | 300〜400万円 | 400〜500万円 | 500〜600万円 | 600〜700万円 |
年収交渉のコツ
転職時の年収交渉は、多くのクリエイターが苦手とする部分です。しかし、適切な準備と交渉術を身につければ、希望に近い条件を引き出せる可能性が高まります。
- 市場価値を把握する:同じ職種、経験年数の相場を事前にリサーチしておく
- 実績を数字で示す:「売上に貢献した」「コスト削減した」など具体的な成果を伝える
- スキルの幅をアピールする:本来の職種以外にも対応できるスキルをアピール
- オファー面談を活用する:内定後のオファー面談で給与交渉をするのも効果的
- 年収以外の条件も考慮する:リモートワーク、フレックス制度、教育制度なども総合的に評価
ポイント:年収交渉は内定前の面接ではなく、内定後のオファー面談で行うのが効果的です。この段階では企業側があなたを採用したいと決めている状態なので、交渉の余地が生まれやすくなります。
業界別クリエイターの需要動向

クリエイターの需要は業界によって大きく異なります。ここでは、主要な業界別のクリエイター需要動向を分析します。
ゲーム業界のクリエイター需要
ゲーム業界では、UIUXデザイナー、3DCGデザイナー、アニメーション・エフェクトデザイナーの需要が特に高まっています。調査によると、ゲームクリエイターの転職理由として「仕事の内容に興味があった」が最も多く、次いで「実務経験やキャリアを積める」「専門的な知識・技術を活かせる」が続きます。
また、ゲーム業界の転職では、「職種ずらし」が有効な戦略となることもあります。例えば、イラストレーターとしての採用が難しい場合でも、UIデザイナーやアニメーターなど関連職種でのキャリアをスタートさせることで、業界内での経験を積むことができます。
広告・マーケティング業界のクリエイター需要
広告・マーケティング業界では、デジタルマーケティングの台頭により、Webデザイナー、動画クリエイター、コンテンツマーケターの需要が高まっています。特に、データ分析スキルを持ったクリエイターや、SEOに強いコンテンツクリエイターの価値が上昇しています。
この業界では、クリエイティブの質だけでなく、マーケティング効果を意識した制作ができるかどうかが重要視されています。そのため、ポートフォリオでも「どのような課題を解決したか」「どのような成果を出したか」を明確に示すことが採用につながります。
ITスタートアップのクリエイター需要
ITスタートアップでは、プロダクトデザイナー、UIUXデザイナー、テクニカルライターなどの需要が高まっています。スタートアップ特有の少人数体制では、複数のスキルを持つ「マルチクリエイター」が重宝されます。
この業界への転職では、技術的な理解力やアジャイル開発への適応力も重要なポイントとなります。また、「会社の将来性が期待できる」「会社の理念に共感した」といった価値観の一致も、転職の決め手となることが多いです。
業界 | 高需要職種 | 求められるスキル | 年収相場 | 働き方の特徴 |
ゲーム | UIUXデザイナー、3DCGデザイナー、アニメーター | Unity/Unreal、Maya/Blender、モーショングラフィックス | 400〜800万円 | プロジェクト制、繁忙期あり、リモート可能な企業増加 |
広告・マーケティング | Webデザイナー、動画クリエイター、コンテンツマーケター | Adobe CC、動画編集、SEO/データ分析 | 400〜700万円 | クライアントワーク、納期重視、フレックス制度あり |
ITスタートアップ | プロダクトデザイナー、UIUXデザイナー、テクニカルライター | Figma/Sketch、プロトタイピング、アジャイル開発 | 450〜900万円 | フルリモート可、フレキシブル、ストックオプションあり |
クリエイター転職成功事例

事例1:デジタル系クリエイターの転職成功例
Aさん(30代・男性)Webデザイナーから UIUXデザイナーへ
転職前の状況:制作会社でWebデザイナーとして5年勤務。デザインだけでなく、ユーザー体験にも興味を持ち始める。
転職のきっかけ:「スキルアップできているのか分からない」「目標となる先輩や上司がいない」という悩みを抱えていた。
転職活動のポイント:
- UIUXに関する独学と副業で実績を作る
- ポートフォリオにはデザインプロセスを詳細に記載
- 転職エージェントを活用して未経験でも挑戦できる企業を紹介してもらう
転職後の変化:年収が100万円アップ。リモートワーク中心の働き方になり、ワークライフバランスも改善。
アドバイス:「未経験分野への転職でも、関連するスキルや経験をアピールすることで可能性は広がります。また、転職前に副業などで実績を作っておくことも効果的です。」
事例2:グラフィック系クリエイターの転職成功例
Bさん(40代・女性)広告代理店のグラフィックデザイナーからブランディング会社のアートディレクターへ
転職前の状況:広告代理店でグラフィックデザイナーとして10年以上勤務。クライアントとの直接のやり取りや、ブランド構築に興味を持つように。
転職のきっかけ:「給料(年収)が上がらない」「クリエイティブに対する会社の評価に納得がいかない」という悩みがあった。
転職活動のポイント:
- これまでの実績をブランディングの視点で再構成したポートフォリオを作成
- 面接では具体的な成功事例と数字(売上向上、認知度アップなど)を示す
- 転職サイトではなく、知人の紹介で転職先を見つける
転職後の変化:年収が150万円アップ。クライアントとの直接のコミュニケーションが増え、やりがいを感じる。
アドバイス:「長年の経験を活かしつつ、次のステップに進むには、自分の強みを再定義することが大切です。また、人脈を活かした転職も効果的でした。」
事例3:未経験からのクリエイター転職成功例
Cさん(20代・男性)営業職からゲーム業界のUIデザイナーへ
転職前の状況:IT企業の営業職として3年勤務。趣味でゲームのUI改善案を作るなど、クリエイティブな仕事に興味を持つ。
転職のきっかけ:「ゲームが好き」という強い思いと、「自分の意志や思想をゲームに反映したい」という願望があった。
転職活動のポイント:
- オンラインスクールでUIデザインを学び、基礎スキルを習得
- 趣味で作った改善案や自主制作をポートフォリオに
- ゲーム業界専門のエージェントを活用
- 未経験でも挑戦できる中小ゲーム会社から始める
転職後の変化:年収は少し下がったが、「好きなことを仕事にできた」という満足感が大きい。
アドバイス:「未経験からの転職は、最初から理想の条件を求めるのではなく、まずは業界に入ることを優先しました。入ってからのスキルアップと実績作りが重要です。」
未経験からクリエイター職を目指す方へ

未経験からクリエイター職を目指す方にとって、効率的なスキル習得と実績作りが重要です。ここでは、職種別の学習リソースと転身のためのステップを紹介します。
デザイナーを目指す方向けの学習リソース
オンラインスクール・講座
- Udemy(Adobe製品の使い方、UIUXデザインなど多数のコース)
- Schoo(日本語でWebデザイン、グラフィックデザインを学べる)
- デジハク(現役デザイナーから学べるオンラインスクール)
- ShibaLab(UIUXデザイン専門のスクール)
独学におすすめの書籍・サイト
- 『ノンデザイナーズ・デザインブック』(Robin Williams著)
- 『UIデザインの教科書』(安藤 節子著)
- Dribbble(デザインのインスピレーションとトレンド)
- Design Systems(各企業のデザインシステムを学べる)
映像クリエイターを目指す方向けの学習リソース
オンラインスクール・講座
- 動画編集.com(After Effects、Premiere Proなどの講座)
- Vook(現役映像クリエイターによるオンライン講座)
- デジタルハリウッド(映像制作の基礎から応用まで)
- YouTube公式チュートリアル(無料で基本を学べる)
独学におすすめの書籍・サイト
- 『映像編集の教科書』(玄光社)
- 『モーショングラフィックス入門』(MdN)
- Vimeo Staff Picks(質の高い映像作品の参考に)
- Film Riot(映像制作テクニックの無料チュートリアル)
ライター・編集者を目指す方向けの学習リソース
オンラインスクール・講座
- ライティングZENアカデミー(Webライティングの基礎から応用)
- SEOライティング道場(SEOに特化したライティング講座)
- コピーライティングジム(広告・マーケティング向けの文章力)
- note(プロのライターによる講座が多数)
独学におすすめの書籍・サイト
- 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(山田ズーニー著)
- 『SEOに強いWebライティング』(松尾茂起著)
- Webライダー(Webライティングの基礎知識)
- 文賢(文章添削AIで練習できる)
未経験からクリエイター職への転身ステップ
- 基礎スキルの習得:オンラインスクールや独学で必要なスキルを身につける
- ポートフォリオの作成:自主制作でも良いので、実績となる作品を作る
- 副業・フリーランスで経験を積む:クラウドソーシングサイトなどで小さな仕事から始める
- コミュニティへの参加:勉強会やSNSでの交流で人脈を広げる
- 未経験OKの求人を探す:エージェントを活用して可能性を広げる
ポイント:未経験からの転職では、最初から理想の条件を求めるのではなく、まずは業界に入ることを優先しましょう。入社後のスキルアップと実績作りが重要です。また、「職種ずらし」も有効な戦略です。例えば、デザイナーを目指す場合でも、まずはディレクションやコーディングなど関連職種からスタートするという方法もあります。
クリエイター向け転職エージェントの選び方

クリエイターの転職では、専門的な知識を持った転職エージェントの活用が効果的です。調査によると、クリエイターの転職経路として「エージェントからの紹介」は2位にランクインしています。ここでは、クリエイター向け転職エージェントの選び方とおすすめのサービスを紹介します。
転職エージェントを選ぶポイント
- 専門性:クリエイティブ職に特化しているか
- 求人の質と量:非公開求人の数や質はどうか
- サポート内容:ポートフォリオ添削や面接対策があるか
- 担当者の知識:業界や職種について詳しいか
- 口コミ評判:実際の利用者の評価はどうか
おすすめのクリエイター向け転職エージェント5選
クリエイターキャリア
- 特徴:クリエイティブ職専門のエージェント
- 強み:デザイナー、映像、Web系に強い
- サポート:ポートフォリオ添削、面接対策あり
- 求人数:約3,000件(非公開求人多数)
- 対応地域:全国(リモート面談可)
レバテッククリエイター
- 特徴:IT・Web系クリエイター特化型
- 強み:Webデザイナー、UIUXデザイナーに強い
- サポート:キャリアカウンセリング充実
- 求人数:約2,500件
- 対応地域:首都圏中心(リモート面談可)
クリーデンス
- 特徴:ハイクラス向けクリエイティブ職専門
- 強み:アートディレクター、クリエイティブディレクターの求人に強い
- サポート:年収交渉に強み
- 求人数:約1,000件(厳選された質の高い求人)
- 対応地域:首都圏、関西圏
マイナビクリエイター
- 特徴:大手マイナビのクリエイター専門部門
- 強み:幅広い職種と業界の求人がある
- サポート:充実した面接対策、企業情報提供
- 求人数:約5,000件
- 対応地域:全国
ギークリー
- 特徴:ゲーム・エンタメ業界特化型
- 強み:ゲームデザイナー、3DCGデザイナーの求人に強い
- サポート:業界に精通したアドバイザーによる支援
- 求人数:約1,500件
- 対応地域:首都圏中心(リモート面談可)
ワークポート
- 特徴:IT・クリエイティブ職に強い総合型
- 強み:未経験向けの求人も多い
- サポート:充実した求人情報と面接対策
- 求人数:約20,000件(IT系含む)
- 対応地域:全国
ポイント:複数のエージェントに登録することで、より多くの求人情報にアクセスできます。ただし、自分の希望や状況を明確に伝え、効率的なサポートを受けられるよう心がけましょう。
まとめ:クリエイターの転職成功のために

クリエイターの転職事情は、職種や業界によって大きく異なりますが、共通して重要なポイントもあります。最後に、クリエイターの転職成功のための重要ポイントをまとめます。
転職成功のためのポイント
- 自分の強みを明確にし、ポートフォリオで効果的に伝える
- 市場価値を把握し、適切な年収交渉をする
- 業界・職種の最新トレンドを常にキャッチアップする
- 専門エージェントを活用して非公開求人にアクセスする
- 転職前に副業などで新しいスキルや実績を作っておく
転職時の注意点
- 条件だけで判断せず、会社の文化や価値観との相性も重視する
- スキルアップの機会があるかを確認する
- 目標となる先輩や上司の存在を確認する
- 仕事の進め方や働き方が自分に合うか確認する
- 将来のキャリアパスを見据えた判断をする
クリエイターの転職は、単なる職場の移動ではなく、キャリアの次のステップを踏み出す重要な機会です。自分の「興味」「能力」「価値観」が合致する環境を見つけることで、より充実したクリエイティブキャリアを築くことができるでしょう。
この記事が、クリエイターの皆さんの転職活動の一助となれば幸いです。
クリエイターの転職情報を定期的にお届けします
最新の転職市場動向、職種別の求人情報、ポートフォリオ作成のコツなど、クリエイターの転職に役立つ情報を定期的にメールでお届けします。