アーキビストは、公 文書 館などで歴史的価値のある公 文書を評価し、保存し、将来の利用を保証する専門職です。
この導入では職務の全体像と現在の求められ方を簡潔に示します。国立公文書館が進める認証制度は、専門性を可視化し、信頼を高めています。
デジタル化が進む現代では、紙と電子の両面で記録管理が必要です。倫理観や評価選別、保存の実務が重要な役割を担います。
本記事は必要な知識やスキル、学び方、申請手続きまでを順を追って解説します。読後には次に取るべき具体的な行動が見えるようになります。
主要なポイント
- 公 文書 館での記録評価と保存が職務の中核である。
- デジタルと紙の両面での管理能力が不可欠である。
- 国立公文書館の認証制度が専門性を支える。
- 倫理と利用設計が市民の知る権利を支える。
- 本記事で学び、次の行動が明確になる。
アーキビストとは何か:公文書館等で求められる専門職の定義と重要性
組織の記録管理で不可欠な専門性とは何かを明確にします。公文書館や大学のアーカイブズ機関で働く専門職は、日々生成される記録から永続的価値を判定し、保存と利用を制度的に担保します。
具体的な役割は、資料の来歴把握、真正性の担保、目録作成、アクセス提供、保存環境の管理など多岐にわたります。これらは単なる保管作業ではなく、未来の証拠を守る行為です。
評価選別・保存・利用保証と高い倫理観
評価選別では作成主体や機能、文脈を分析して証拠価値を判断します。保存では酸性紙対策や温湿度管理、デジタル保存の戦略が必要です。
倫理綱領に基づく行動は不可欠です。記録の改ざんや恣意的な隠蔽を防ぎ、社会の説明責任と検証可能性を支えます。
“記録を守ることは、未来の検証を保証する重要な公共的行為である。”
- 制度的継承の確保
- 法制度理解と利用支援の両立
- 組織運営・予算管理の実務
現代におけるニーズの背景と社会的意義
法制度の変化と技術革新が重なり、記録管理の重要性が明確になっています。
2009年の公文書管理法は、公 文書 を「国民共有の知的資源」と位置づけました。これにより公的記録の公共性が強調され、保存と公開の責務が制度的に裏付けられています。
制度面の整備は段階的に進みました。2012年に登録制度が始まり、2020年には国家による認証制度が導入されました。2024年には大学院修了者向けの准認証も整備され、専門職の可視化が進んでいます。
デジタル化により日々生成される電子記録の量は爆発的に増えています。に よっ て、真正性や長期可用性を守る専門的手順が不可欠になっています。
- 信頼できる記録基盤は研究・行政・市民の意思決定を支えます。
- 災害時の記録保全や継続運用は、社会のレジリエンスに直結します。
- 企業や大学など公 文書 館以外の現場にも高度な管理ニーズが拡大しています。
注:本節は法改正と技術進展を簡潔に整理し、現代の記録需要と社会的意義を示しています。
アーキビストとして必要な知識技能等と調査研究能力
保存・利活用の現場では、学問的知見と実務経験が結びついて専門性が育ちます。
知識・技能 等:評価選別・保存・利用に おけ る基礎
評価選別では作成主体・機能・記録系列を分析し、証拠価値と情報価値を判断します。
保存は温湿度管理や酸性紙対策、箱替え、修復判断に加え、デジタル長期保存(フォーマット移行・チェックサム・冗長保管)を含みます。
調査 研究 能力と実務 経験 が支える専門性
調査 研究 能力は来歴調査や関連史料の突合、論文執筆で得た知見を実務判断に反映させます。
実務 経験は収集から目録化・保存措置・公開・広報までのサイクルを回すことで総合力を養います。
デジタル時代の情報処理・ITに相当する技能
デジタル領域ではメタデータ設計、データベース運用、権利処理ワークフロー、API連携やUI設計が鍵です。
リスク管理とセキュリティ(真正性・完全性の担保)は現代に必要なコア領域です。
“知識・技能等と実務経験、調査研究能力の融合が、記録を次世代に繋ぐ力となる。”
認証 :三要件と審査・付与の流れ
審査と付与のプロセスを追うと、制度の公平性と実務性が見えてきます。
三要件は明確です。知識・技能等は大学院や研修で得る内容が該当します。
実務 経験は原則3年以上、アーカイブズ実務での蓄積が求められます。
申請と審査、認証状の付与
申請者は書類一式を提出し、国立公文書館の認証委員会が2018年職務基準書に照らして審査します。
合格通知後に登録料4,000円(税込)を納めると、正式に認証状が授与されます。
“Archivist Certified by the National Archives of Japan” の和文表記は「認証アーキビスト」です。
名簿掲載と実績データ
名簿には氏名・認証番号・認証年度・所属・都道府県が掲載されます。住所等の公開は本人同意が前提です。
回次 | 申請 | 合格 | 認証 |
---|---|---|---|
第1回 | 248 | 190 | 190 |
第2回 | 81 | 57 | 57 |
第3回 | 50 | 34 | 34 |
第4回 | 59 | 42 | 42 |
第5回 | 40 | 32 | 32 |
累計では申請478・合格355・認証355となり、制度の定着がうかがえます。
大学 大学院・関係研修で身につけるアーカイブズ学と技能等
大学院での体系的な履修は、保存・記述・利活用の実務力を段階的に養います。大学院のプログラムは理論と現場技術を結びつけます。
大学院の主なプログラム
学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻や大阪大学のコース、東北・中央・筑波などは、評価選別やデジタル保存を含む科目設計です。
関係研修の活用
国立公文書館のアーカイブズ研修Ⅰ・Ⅲ(合計4週間)や国文学研究資料館の長期コースは、即戦力の技能を補強します。
履修計画の立て方
まず基礎(評価・保存・利用)を履修し、次に応用(デジタル保存・権利処理)、最後に現場実習と研究発表でまとめます。
- 比較基準:実習機会、教員の専門分野、連携機関で選択すること。
- 研究年報や学会発表は、後の申請で研究実績として活用できます。
キャリアルート:准認証アーキビスト・登録アーキビスト・実務 経験 に よっ て進む道
大学院修了後のキャリア形成は、制度と現場経験を結ぶ戦略が鍵になります。
大学院修了後の橋渡し
2024年に導入された制度は、修了直後の専門性を可視化し、現場での実践機会を広げます。短期的には表示資格を活用して採用競争力を高めるのが現実的です。
日本アーカイブズ学会の制度に つい て
2012年に始まった学会の登録制度は、大学院履修と1〜2年程度の実務経験、研究業績の組合せで専門性を証明します。ここを経て認証 アーキビストを目指す流れが一般的です。
就職先の多様化
“現場実務+研究発信+研修受講の三本柱で、学びを実務に繋げよ。”
- 短期戦略:修了直後の制度を活用し、現場実践機会を確保する。
- 中期戦略:学会の要件を満たし、認証 アーキビストを目指す。
- 長期戦略:実務 経験を積みつつ研究科や学会活動に参加し続ける。
実務ステップガイド:申請手続 し て 認証を得るため に する こと
申請プロセスを段階的に整理すると、作業負担が軽減されます。まずは最新版の『申請の手引き』を精読し、要件と提出方法を正確に把握しましょう。
申請書類の準備について
学位や研修修了証、業務経歴、研究成果は一覧でまとめます。実務 経験 が証明できる在籍証明や上長署名は必須です。
- 調査 研究の成果は査読論文や学会発表でリスト化する。
- 申請書様式は指定のWord/PDFに従い、ファイル形式と容量を確認する。
- スケジュールを逆算し、証明書取得や上長決裁の余裕を確保する。
審査結果から登録料納付・名簿公開までの流れ
審査結果は個別通知で届きます。合格者は期日内に登録料4,000円を銀行振込し、支払記録を保存してください。
納付確認後に認証状が送付 されます。名簿には氏名・認証番号・認証年度・所属名・現住所(都道府県)が掲載されますが、所属・現住所は同意時のみ公開されます。
名簿の無断転載・営業利用は禁止されています。
不明点はFAQや担当窓口へ早めに照会し、差し戻しを防ぎましょう。
結論
記録専門職の役割は、制度整備と現場経験の相互作用で強化されてきました。国立公文書館の認証制度や学会の登録、大学院・研修の充実が、信頼とキャリア基盤を支えています。
現代にはデジタル長期保存や権利調整、公開とプライバシーの両立といった複合的な課題があり、公 文書 を含む記録管理は高度な対応を求められます。学びと実践を循環させることが不可欠です。
次の一歩としては、履修・研修の選定、現場実習の確保、研究発表やポートフォリオ作成を計画してください。制度とコミュニティを活用し続けることが、専門性の持続的成長と機会拡大に直結します。最後に、認証を目指す人は小さな行動から着実に始めましょう。
FAQ
認証アーキビストになるために必要な三要件とは何ですか?
三要件は「専門的な知識・技能等」「一定の実務経験」「調査研究能力」です。大学院でアーカイブズ学や関連科目を履修し、公文書館や博物館などでの実務経験を積むこと、さらに研究や業績で専門性を示すことが求められます。
公文書館やアーカイブズ機関での具体的な役割は何ですか?
公文書館では記録の評価選別、恒久保存、保存環境管理、利用者対応、デジタル化といった業務を担います。保存と公開のバランスを保ち、国民共有の知的資源として文書の真正性と利用保証を守ることが重要です。
大学院で学ぶべきプログラムや大学はどこが代表的ですか?
アーカイブズ学や情報学を学べる大学院として、学習院大学、大阪大学、東北大学、中央大学、筑波大学などが代表的です。実務に直結する科目や演習、実習が充実しているプログラムを選ぶと良いでしょう。
実務経験はどのくらい必要ですか?
必要な実務経験の量は認証基準により異なりますが、公文書館や関連機関での保存・目録作成・利用支援などの実務経験が数年単位で求められるケースが一般的です。研修や短期派遣での経験も評価されます。
デジタル時代に必要なITスキルとは何ですか?
デジタルアーカイブ構築のためのデータ管理、メタデータ設計、デジタル保存(OAISなど)の理解、デジタル撮影・OCR、データベース運用や基礎的なプログラミング知識が役立ちます。これらは保存と利用の両面で重要です。
申請書類の審査や認証状の付与プロセスはどう進みますか?
まず申請書類を提出し、書類審査で知識・技能や実務実績、研究成果を確認します。審査通過後に認証状を授与し、名簿に掲載します。申請者数や合格者数の推移は年度ごとに公表されることがあります。
関係研修や短期コースにはどのようなものがありますか?
国立公文書館のアーカイブズ研修や地方公共団体、大学の公開研修があります。保存管理技術、デジタル保存、目録作成、利用サービスの実務研修など実践的な科目が多く、履歴書に書ける実績になります。
准認証から正式な登録アーキビストに進むにはどのような道がありますか?
大学院修了後に准認証的な資格や評価を経て、実務経験を積み、所定の審査を受けることで登録アーキビストに進みます。日本アーカイブズ学会などが運営する制度や名簿登録制度が橋渡しの役割を果たします。
就職先としてどのような機関が考えられますか?
主な就職先は国立・都道府県・市区町村の公文書館、大学図書館、博物館、民間の企業アーカイブ部門や調査機関です。保存と利用の両面での専門性が求められる職場が多いです。
申請手続きの準備で押さえておくべきポイントは何ですか?
申請手引きをよく読み、必要書類を整えることが基本です。実務実績の証明、研究業績、履修履歴、研修参加履歴を整理し、申請書に沿って分かりやすくまとめると審査がスムーズになります。